システムトレードブログ

シストレ駆け出しの頃にはまる罠(20) マーケットインパクトの考え方とカスタマイズ方法のまとめ

今日はシストレ駆け出しの頃にはまる罠シリーズ(20)

「マーケットインパクトの考え方とカスタマイズ方法のまとめ」

についてです。

マーケットインパクトの定義は、一般的には

「市場の流動性が十分でなかったり,大量の注文を出した場合に、自身の売り買いが売値の下落や買値の上昇をもたらすこと」

という感じで定義されると思います。

このうち「市場の流動性が十分でない」銘柄は、基本的にはシステムトレード戦略では売買対象となりにくいため、

実際には後者の「自身の売り買いが売値の下落や買値の上昇をもたらす」という部分がメインとなってきます。

こちらにつきましては非常に難しいところで、運用資金に応じて変わってくる要素ともいえます。

以下に、マーケットインパクトに対する私の考え方を書いてみます。

■販売戦略には銘柄毎の仕掛ける株数の制限があるため、影響は限定的

販売戦略では、イザナミの最適分散投資機能により、「前日出来高の0.5%以上は注文しない」といった設定になっています。

そのため、資金の大小に関わらず、仕掛けの段階でリスクはある程度自動的に制限されています。

資金が大きい方の場合、売買代金が小さくスタイルと合わない銘柄は、イザナミの最適分散投資の段階でシグナルから除外されます。

■保有日数が長いロジックほど、マーケットインパクトの影響は薄れる

たとえばですが、デイトレード戦略などのように保有日数が短い戦略の場合は、実際マーケットインパクトの影響は無視できない場合もあるかもしれません。

これは、たとえば買い戦略で仕掛けた銘柄がマーケットインパクトにより初日にストップ高に張り付いてしまった場合などには±0になってしまうため、従来通りのパフォーマンスを上げられない懸念があります。

一方、たとえば一週間持ち越す買いスイングトレード戦略において、マーケットインパクトにより初日にストップ高に張り付いたらどうでしょうか。

強い動きを確認したことにより、翌日新たな市場参加者を呼び込む結果となる場合もあるため、出来高が増えて翌日さらに上昇する場合もあると思います。

翌日の値幅は当日の終値基準で計算されるため、翌日は仕掛けた当日とはまた違う値動きになります。

保有期間が長い戦略ほど途中段階で新たな市場参加者を呼び込み、「初日のマーケットインパクトはあってないようなもの」と言えるほど影響が薄れていきます。

■仕掛ける当日に気配値が上がるのは、必ずしもマーケットインパクトの影響とはいえない

たとえばですが、買いを仕掛けた銘柄の朝の気配値が高くなる場合がありますが、これは必ずしもマーケットインパクトの影響とはいえません。

むしろ、「その銘柄を割安だと感じた市場参加者が、買いを仕掛けている」場合の方が多いといえます。

この根拠としましては、私自身で既存戦略とは完全にシグナル発生銘柄が異なる逆張り買い戦略をいくつかフォワードテストしておりますが、朝の気配が強い場合が多々見受けられるからです。

「逆張り(前日に値下がりした銘柄)は一般的に翌日朝の気配が強くなる場合が多い」というのが、バックテスト検証上でも実際の相場でも確認した上での私自身の所見です。

むしろこの点は、「多くの市場参加者が買いたいと思う箇所でシグナルが出ている」という点ではプラスといえるかもしれません。


以上のような点から、私自身はマーケットインパクトはあってないようなものだと考えております。

マーケットインパクトが悪影響を及ぼす場合もあれば、買いの強さが新たな市場参加者を呼び込み新たな値動きを形成する場合もあり、

メリットとデメリットの両方がある要素だと思っております。

その上で、やはり気になるという方には

「販売戦略の標準ファイルと仕掛ける銘柄を変えるカスタマイズを行う」

という手法が有効だと思います。

実際、完全なゼロから戦略を開発するよりは、販売戦略の一部をカスタマイズした方が効率もいいかもしれません。

カスタマイズを行うことにより将来的な成績が標準ファイルより良くなる場合もあれば悪くなる場合もありますし、これは誰にも分からない部分ではありますが、

「マーケットインパクトを減らす」

という点においては有効に機能する手法を以下にまとめてみます。

■売買代金制限を変える(効果:★★★★〜★★★★★)

たとえばですが、「過去15日間に、売買代金が100より小さい日が1日以上存在しない」といった条件が設定されている場合、

「過去15日間に、売買代金が100より小さい日が1日以上存在する」というように相反する条件を入れますと、標準ファイルとは仕掛ける銘柄が一切かぶらなくなりマーケットインパクトはご自身のものをのぞいて0に近くなります。

上記手法は小型株主体のシグナルになってしまうため標準ファイルよりも収支が荒くなる懸念もありますが、個人用途としては機能する可能性も十分にあります。

上記のように、「仕掛け条件に相反する条件を入れる」ことによりマーケットインパクトを極限まで減らすことが可能です。

または、「過去15日間に、売買代金が1000より小さい日が1日以上存在しない」などのように数字を上げ、超大型株中心のシグナルにすることにより、利回りは落ちるものの資金がかなり大きい人でも運用できるようになるかもしれません。

■株価制限を変える(効果:★★)

たとえば「株価の低い場合には取引しない:150円以下」などとなっている戦略の場合、

「株価の低い場合には取引しない:50円以下」などに変えますと、50円〜150円の間の標準ファイルではシグナルが絶対に発生しない銘柄が売買対象になることもありますので、マーケットインパクトの抑制につながります。

または、「株価の高い場合は取引しない」にチェックを入れ、「100,000円以上」などと設定しても、標準ファイルとはシグナルが変わってくる場合があります。

■市場を変える(効果:★★★)

全市場全銘柄が売買対象の場合には、売買対象を東証一部などに限定することにより利回りは落ちるものの、マーケットインパクト抑制効果はあります。

■仕掛け条件を変える(効果:★★★★★)

個人的には、マーケットインパクト抑制のためにはこれが最も有効な手法であると考えています。

これは初心者の方には難しい部分のためシステムトレード中級者以上の方向けではありますが、

その戦略で使われている指標を全て変更してしまいますと影響が大きすぎるため、イザナミ2でいいますとどちらかというと下の方に設定されている指標1つを、別な指標に変えていくというカスタマイズが有効かもしれません。

どの指標を変更するといいかはどうしても分からない部分のため、こちらにつきましては変更+バックテストという検証手順を行っていただく必要があります。

■手仕舞い条件を変える(効果:★★★)

保有日数1日で手仕舞いという戦略の場合には、保有日数2日で手仕舞いという条件に変更されても有効な場合があります。

特に、デイトレード戦略を1日オーバーナイトに変更するというカスタマイズは有効な場合が多いように思います。

こちらもどのように変更するといいかはどうしても分からない部分のため、こちらにつきましては変更+バックテストという検証手順を行っていただく必要があります。

■おすすめ:最適分散投資の優先順を変える(効果:★★★★)

特にシステムトレード初心者の方に一番おすすめできるのがこの手法です。

たとえば最適分散投資の優先順設定で、「移動平均乖離率(終値)(15)が小さい順」となっていた場合には、

「移動平均乖離率(終値)(5)が小さい順」
「前日比が小さい順」

などと変更されると標準ファイルと仕掛ける銘柄が変わる場合があります。

ここで大元となる考え方は、バックテスト段階の期待値です。

バックテスト時に期待値がたとえば0.80%の戦略の場合、

「最適分散投資でどんな優先順で仕掛けようとも、過去の検証上では0.80%の期待値がある位置」

で仕掛けることになります。

そのため優先順を変更されても大元となるバックテスト段階の期待値には変わりがありませんし、長期的に見ればその戦略本来の成績に近づいていくのではないかと考えております。

イザナミで検証はできないと思われますが、

・優先順には従わず、ランダムで仕掛ける銘柄を決める
・あるいは、標準ファイルのシグナルと異なる銘柄から優先的に仕掛けていく

というのも、マーケットインパクトの抑制という点から考えると有効なアイデアといえるかもしれません。

■おすすめ:市場投入資金・1銘柄の上限投入額・下限投入額を下げる(効果:★★★★)

こちらも、システムトレード初心者の方におすすめできる手法です。

もちろん各戦略の標準ファイルでもある程度リスクを落としたものですが、

初心者の方がいきなり運用された場合、「自分には値動きが荒すぎる」と感じられるかもしれません。

そういった際にはこのカスタマイズが有効で、より一層資産推移を穏やかにすることが可能です。

市場投入資金を100%→80%に変更したり、
1銘柄の下限投入額を250千円→150千円などに変更すると、

実際に資産推移が標準ファイルよりも穏やかになるため、システムトレード運用における精神的負担が減るのは間違いないと思います。

ただ、上記のカスタマイズをすると利回りそのものは減るため、ご自身の納得されるバランスに調整されるのがベストと考えます。

■おすすめ:1日の最大投入額を下げる(効果:★★)

こちらは時間分散的な部分ですが、たとえば1日の最大投入額を100%→80%などに下げることにより、もちろん将来的な成績は分かりませんが、リスクそのものは下げることが可能です。


以上が代表的なカスタマイズ方法だと思われます。

非常に難しい点といたしまして、やはり

「カスタマイズをすることにより結果が良くなるか悪くなるかが分からない」

という部分だと思います。

これはシステムトレードにおける永遠のテーマではありますが、もちろん私自身にも分からない要素でもあります苦笑

そのため、カスタマイズした後は、しばらくは資金を投入せずイザナミのみで検証を続けるかもしくは小さい資金で運用し、

ご自身で納得がいくものになったら本格運用を開始する、というのが王道だと思っております。

私のポリシーといたしましてはやはり、

「システムトレードを継続するためにはリスクをとりすぎないこと。」

利回りを重視しすぎるよりも、やはりご自身に合ったルールであるかどうかを重視されるのが無難ではないかと考えております。

トレシズの「シストレ駆け出しの頃にはまる罠」の記事

前々記事:シストレ駆け出しの頃にはまる罠(18) マイルールを構築して裁量を極力取り除く
前の記事:シストレ駆け出しの頃にはまる罠(19) 複数戦略運用時の精神的支柱
今の記事:シストレ駆け出しの頃にはまる罠(20) マーケットインパクトの考え方とカスタマイズ方法のまとめ
次の記事:シストレ駆け出しの頃にはまる罠(21) ご自身に合った格安な証券会社を選ぶ方法
次々記事:シストレ駆け出しの頃にはまる罠(22) 最適分散の検証期間の差

おすすめ記事

シストレ駆け出しの頃にはまる罠(29) 低資金の場合におけるシストレ戦略成績への影響

いや〜、なかなか残暑が厳しいですね苦笑皆様は体調など崩されてはいませんでしょう…

シストレ駆け出しの頃にはまる罠(61) 戦略単体に固執しすぎないこと

シストレで勝つためのアプローチ方法は、いろいろあると思っています。たとえばです…

> このページのURLをPCメールアドレスに送る